オッサンはDesktopが好き

自作PCや機械学習、自転車のことを脈絡無く書きます

「AIはやってみないとわからない」はいつまで通用するのか?

 こんにちは.changです.

 IT企業の方が,「AIはやってみないとわからない」という旨の発言をされるのをしばしば耳にします. 今回はこれについて考察します. また少し捻くれた話になります...

1. やってみないとわからない

 先ず,AIとは関係の無い一般論を話します. 完全リピートでも無ければ,常に仕事は「やってみないとわからない」筈です. ただ,「やってみないとわからない」という発言を実際に聞くことは少ないと思います.

 僕自身,「やってみないとわからない」という発言を控える様にしています. 経験上,やってみないとわからない=惜しくも言わされる言葉という感覚を持っています.

 前提条件として自身の身の上を紹介すると,僕は仕事でユーザーの前に立つ事は殆どありません. 大半は社内に引き籠っています. 会話をするとしたら,社内の人間になります.

 その上で話を続けると,「やってみないとわからない」と発言すると自身の仕事に対してマイナスになります. 「専門的で難しいんだね.君に全て任せるよ」と言われて丸投げになるからです. 仕事を任せられるというのは信頼の表れなので,プラスに働く部分もあります. 開発時はそれで良いでしょう. でも,リリースした後のメンテナンスが大変です. 「この件は難しくて開発者(=chang)しか分からない.(電話を)彼につなぎます」と営業にやられると,研究活動が止まってしまうのです. 愚痴っぽい話ですが,実際に起こっている事です.

 ユーザに対しては尚更「やってみないと分からない」とは言わないとでしょう. 「見積もりできません」=「お断りします.やる気がありません」と捉えられるかも知れません. また,勿論専門家としてユーザーに予備知識の無い仕事を受ける訳ですが,プロジェクトを進める中ではユーザーとの一体感や連帯感を常にキープするべきです.

 ネガティブな事ばかり言いましたが,専門性の高い難しい内容であっても解りやすく説明する能力が,研究者やエンジニアに求められる事は言うまでもありません.

2. やってみないとわからない仕事の対価とは?

 結果をコミット出来ない,或いは正確な見積もりができない仕事に対して,どうやって対価を得るのでしょう. 多くの場合,費やした工数ぶんを請求というやり方になる様です. 昨日の日経ビジネスの記事*1で,東大の松尾先生が「AIベンダーの工数請求方式が日本のAI事業を停滞させた」「組むべきはAIベンダーでは無くスタートアップだ」という旨の発言をされていました. 残念ながら,その通りなのでしょう.

 僕自身もそうですが,ある程度経験を積んだエンジニアであれば仕事に対してリスクを見ます. 「やってみないとわからない」という発言の背景には,「お客様の期待する程の成果は出ない」とか,「自身が担当する仕事の範囲ではお客様の理想を実現出来ない」という意図が見え隠れします. 逃げ道を作っている訳ですね.

 勿論,そうでは無い企業やエンジニアさんもいらっしゃるでしょう. 未知の分野においてプロジェクトがどの様に進むか予想できない,自分達の勉強を含めて進めさせて欲しい,という誠実な発言とも解釈できます. ただ,自分達の勉強を含むなら,ユーザーに対する見積もりは安くなって然りです. AIに対して本当に将来性を感じているならば,現状の利益が低くても,ビジネスの経験を積もうとするでしょう. AI事業の肝となるデータの蓄積にも貪欲な筈です. 上述した松尾先生の発言は,(擦れていない)スタートアップの方がその変のモチベーションが高いという意味かと考えます.

3. やってみないとわからないとどう向き合うか?

 AIに限らず,新しい事への取り組みは常にやってみないとわかりません. 当たり前です. にも関わらず,やってみないとわからないと言い難い雰囲気が在ります. 何故でしょう?

 何処の世界にも管理職という者がいます. その分野には必ずしも精通していなくて,どちらかと言うとお金の事を考えている人達です. 「投資をしたんだから結果を出して」というやり方です. これは至極当然なんですが,「結果だけを出して」という傾向が強すぎるのでしょう. 投資家みたいな感覚で,丸投げにしちゃうんですね. そういうやり方をするなら,投資の様にオプションを複数用意して,駄目だったら直ぐに捨てられる体制が必要だと思います. 日本の中小企業向けでは無いですね.

 AIの特徴に関して言うと,機械学習で頻繁に使用されるPythonスクリプト言語です. 出来合いの(ビルドされた)ソフトとは違って,ソースの改変が容易です. それを生かしてこその機械学習だと,僕は思います. データ解析と言うのは,常にダイナミックです. 日々内容が変わるデータに応じてアルゴリズムを修正したり,過去のデータを含めて再解析をする必要があります. 毎日が「やってみないとわからない」との向き合いだと言う事です. AIベンダーから納品されたソースをそのまま使い続けるだけでは,出来る事が極端に限られてしまうでしょう.

 データ解析が事業にどう根付いていくのか,イメージが掴めていません. 言える事は,「やってみないとわからない」に対して柔軟に,むしろそれを楽しめる様な個人と組織が必要になるという事です.

 ※ 余談ですが,機械学習については受託を受けて新規にソースを書くより,既存で運用出来なくなったソースをメンテナンスする方がビジネスとして面白い様な気がしています.

4. まとめ

結論:

  • 社内に対しての「やってみないとわからない」は,専門家の怠慢である
  • ユーザに対しての「やってみないとわからない」は,お断り見積もりか,失敗を想定した上での発言である

 また偉そうな上辺話を書いてしまいました. 書きたいソースも掛けてないし,Macも使えていません. 年末年始は頑張ろう...